※この記事は「私の経営者名鑑」の編集部へ寄せられた紹介記事
「現場あってこそ」の経営が人と会社を動かす ─ その魅力とは?
建設業界に「人」が大切と言うのは簡単ですが、実際にそれを貫き経営に生かしてきた人物はどれほどいるでしょうか。建設会社と言えば大きなビル、地域のインフラ、目に見える成果で話題を集めることが多いですが、「現場の声」が本当に生かされているのか?という悩みや疑問を持つ方も多いと思います。
そんな中で今回ご紹介したいのが、戸田建設株式会社の代表取締役社長・大谷清介(おおたに せいすけ)さんです。「現場主義」にこだわり抜いた実務経験の積み重ねと、堅実で誠実な経営姿勢に定評がある経営者。
この記事では、大谷さんがどんな経緯で経営者となり、どんな活動や会社づくりを心がけているのかを深掘りします。長年の一貫したキャリアがどのように会社の強みに結びつき、人・現場・社会に向き合う力となっているのか、私自身の感想もまじえながら分かりやすくご案内します。
「北海道の現場少年」からキャリアを築いた歩み
大谷清介さんは、1958年、北海道に生まれました。地元・札幌南高校を卒業後は、北海道大学の工学部建築学科へと進学。若いころから建物をつくることに強い関心を持っていたそうです。その後、1982年に大学を卒業。そして、戸田建設株式会社に入社します。
入社後はまさに「現場づくり」の人生のスタート。東京支店の建築工事部で様々なプロジェクトに従事し、とても多くの建築現場を歩き、時には作業所長もつとめるなど、現場を知り尽くしてきた経歴が特徴的です。
特に印象深いのは、東京都心・丸の内、大手町、有楽町地区で進められた大型の「丸の内オアゾ」の建設では、リーダーとして最前線に立っていた点です。こうしたビルや施設が生まれる現場で、単なる「管理」や「監督」ではなく、仲間や職人たちと共に汗を流し、現場の声を聞き高い技術力と運営力を培ってきました。この積み上げが、のちの経営判断や組織づくりにしっかり生かされています。
実直な現場の積み重ねから、組織と信頼を積み上げて
大谷さんの経歴の大きな特徴は、一貫して「現場あっての会社」という考え方を持っている点です。時には舞浜の大型ホテル、東京都庁議会議事堂といった公共的な施設づくりなどにも抜てきされ、入社7年目には一級建築士、さらに技術士の資格も取得。多様な現場経験と資格取得の努力が、その後の信頼と指導力の源になっています。
現場でぶつかる課題に一つ一つ向き合い、「施工美の追求」を現場のスローガンとして掲げたというエピソードは印象的です。現場が「会社や社会の看板」だという誇りをもって清掃や整理整頓を徹底し、現場こそ社会とつながる場所だと実感してきたのだそうです。彼自身、今も出勤前に自分が手掛けたビル群を眺めることを日課にしているという話からも、仕事への誇りと愛情が伝わってきます。
現場だけでなく「組織全体」への視点
現場を極めるだけでなく、経営者になってからは「部分最適」ではなく「全体最適」、つまり会社全体のバランスや社員全体の働きやすさを強く意識するようになっています。2016年以降は千葉支店長、2018年は関東支店長、2020年には管理本部に移り常務執行役員として本社機能の中心にも関わりました。「現場」や「管理」を両輪で経験しためずらしいタイプの経営リーダーと言えるかもしれません。
例えば、現場経験者ならではの現実的な視点から、人や途中工程の調整、原価や安全などへの目配り、そして職人・社員ひとりひとりの声をくみ取る工夫も積み重ねてきたそうです。
「全体最適」を掲げて、部分的な利益や個別の論理にこだわりすぎず、会社全体の持続的な成長につなげる手腕。ここが、現場主義と経営視点を両立する経営者らしさだと私は感じます。
社長就任後に打ち出した「真心を大切にした経営姿勢」
2021年4月、戸田建設株式会社の代表取締役社長に就任します(前任は今井雅則氏)。
トップの役割は単なる“決断者”ではなく、全社に信頼感と方向感を示すこと。大谷さんは「誠実さ」を何より重視しています。その背景には、古典「孟子」の言葉「至誠にして動かざるものは未だ之れ有らざるなり(まごころを尽くせば人は必ず動く)」を座右の銘とされているというエピソードもあります。
組織のトップとなってからも、現場の視点や誠実な姿勢、社員へのまごころを経営理念としてぶれずに貫いているそうです。
働きやすさと誇れる現場づくりへのこだわり
社長として最初に手掛けたビジョンの一つが「働きがい改革」です。社員一人ひとりが熱意と誇りを持って働けるよう、会社としても環境整備やサポート体制の強化に力を入れています。たとえば、新しい社屋(TODA BUILDING)の建設プロジェクトでは自ら陣頭指揮を執り、リモートワークや柔軟な働き方、組織間の「壁を低くする」空間づくりにこだわりました。このプロジェクトは100年に一度ともいわれる規模で、設計も施工も自社で実施した「技術力の結晶」です。
さらに、日本最高レベルの耐震性能を目指して、あえてコストと期間負担を受け入れた「コアウォール免震構造」を採用しています。建設業で求められるのは出来上がった建物だけでなく、安心・安全で未来の社会を支えることだという思いが随所に感じられます。
「価値のゲートキーパー」としての新しい役割
140周年を迎えた戸田建設は、2031年の創業150周年に向けた「CX150」という中長期ビジョンを策定中。「共創社会」という新しい社会づくり、さまざまな生活者や企業と“つなぐ役割”を目指しています。
単なるビル建設だけにとどまらず、浮体式洋上風力発電や、農業と建設を組み合わせた新しい取り組みなど、他分野への展開にもまっすぐ取り組んでいる点もユニークだと感じます。
「技術」も「人」も大切に~サステナビリティ経営へのまなざし
会社全体でSDGsにも真摯に向き合い、安全・品質・環境といった分野でデジタル化やICT活用を含め積極的な方針を打ち出しています。多様性を尊重する人材戦略や、透明性のある情報開示にも力を入れており、働く人にも社会にも信頼される建設会社作りを推進しています。
これからの展望と、私が感じる大谷清介さんの魅力
2026年現在、大谷さんは60代後半に差し掛かるベテランの実業家です。
厳しい経済環境が続く中でも、持続可能性を強く意識し「突出した価値の蓄積」を目指しているそうです。決して派手さはありませんが、現場で培った経験や誠実な経営方針、そして人と人、企業と社会をつなぐ姿勢に私は強い信頼感を覚えます。
個人的には、「人を大切にする」「現場あってこそ」――この一貫した姿勢が、キラリと光る経営者だと感じました。会社を守り、未来へ受け継ぐ責任。社長ではあるけれども孤高のリーダーではなく、泥臭さや温かみ、そして周囲の声を聞こうとする誠実さが、多くの社員や取引先にもよい影響を与えているのではないでしょうか。
「会社は人がつくる。人でつくる。」というブランドスローガンも、現場主義の大谷さんらしさを感じます。これからも現実的で堅実、そして誠実な経営のもと、企業価値や社会への貢献を積み上げていってくれることを願っています。
戸田建設の仕事の幅は広がっていますが、「現場へのこだわり」と「全体を大切にする視点」のハイブリッドで、日本の建設業界において着実に信頼を得ている大谷清介さん。長年の社内外での信頼と経験は、表には出にくいかも知れませんがしみじみと「厚み」が感じられる人物です。
これからの建設業界がどんな社会的役割を果たしていくのか、変化が加速する時代ですが、現場を知り尽くし社員を大事に考える経営者・大谷清介さんの価値がますます発揮されていくのではないか――。そんな期待を持っています。
※この記事は「私の経営者名鑑」の編集部へ寄せられた紹介記事

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