※この記事は「私の経営者名鑑」の編集部へ寄せられた紹介記事
忙しく変わりゆく現代社会の中で、「自分たちが暮らす町や建物はどう生み出され、どんな思いが込められているのか?」と考えたことはありませんか?
数えきれない駅前のビル、公園に佇む図書館、子どもの通う学校──どこか心地よく、一緒に過ごす人と地域に馴染む、そんな場所には必ず建築家の思いと技術が息づいています。
今回ご紹介するのは、日本を代表する建築家・教育者・設計事務所の代表でもある古谷誠章(ふるや のぶあき)さん。国内外の公共施設、学校、図書館など身近な建物を数多く手がけ、その実績と人柄が多くの人に親しまれてきた人物です。
「人に寄り添い、地域につながる建築とは何か?」を真摯に追いかけ続ける古谷さんの魅力を、エピソードや具体的な活動例とともにわかりやすく、たっぷりお届けします!
建築家・教育者・リーダー──古谷誠章さんのあゆみと存在感
古谷誠章さんは1955年、東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科を卒業し、そのまま同大大学院へ進学。建築を「つくること」だけでなく「教え、考え、社会に活かすこと」の両面を大切に歩んできました。
大学院では人と社会、建築のあり方に深い考察を持つ穂積信夫先生のもとで学び、後にご本人も「今井兼次や吉阪隆正など、建築に“何を”宿すべきかを考え抜く偉大な教育の系譜に強い影響を受けた」と語っています。
1978年の大学卒業から、研究助手や近畿大学工学部講師を経て、1986年には日本の芸術家たちが新しい扉を開く国際研修へ。スイスでは、世界的な建築家マリオ・ボッタのもとで設計の最前線を経験。その後、ご自身の設計事務所「NASCA」を建築家・八木佐千子さんと共同設立し、地域に根ざした実践を全国各地で行っていきました。
今では、早稲田大学の教授や日本建築学会会長など、日本の建築界をしっかり支える存在へ。その歩みの中で「多くの弟子・学生を育て、社会への貢献に心をくだく建築家」として厚い信頼を集めています。
私が調べていて印象的だったのは、その“建築家”としての実績だけでなく、社会や人の営みに丁寧に耳を傾ける姿勢です。福祉施設や学校、交流センターなど、関わる場がどれも“使う人”や“地域”をとても大事にしていることが伝わってきます。“建てること”だけにとらわれず、本当に求められる空間や役割を考える──そのスタンスこそが、多くの信頼や受賞につながっているのでしょう。
“みんなの場所”をつくる建築──代表作が物語るこだわりと魅力
古谷誠章さんが手がけてきた建物には、「誰かの居場所」、「地域の宝物」──そんなあたたかい雰囲気があります。有名な図書館や市民館、学校などは新聞でも度々取り上げられるので、どこかで目にしたことのある方もいるかもしれません。
じっくり大切に使われる図書館「小布施町立図書館 まちとしょテラソ」
長野県小布施町にあるこの図書館は、本が好きな人はもちろん、地域の子どもや大人みんなが集まるコミュニティの中核になっています。古谷さんの設計は「ただ本を並べる場所」にとどまらず、家のリビングのようにくつろぎ、対話が生まれるような空間の工夫がたっぷり詰まっています。
この図書館は、日本図書館協会建築賞やAACA賞など、公共建築分野でも高評価。実際に訪れた人から「普段、本を読まない子も自然に集まり、勉強会や相談がしやすい場」と好評です。私も写真を見た時、その優しい光の入り方や、木の温もりを活かした設計に「こんな図書館が近所にあったらどれだけ素敵だろう」と思いました。
地域住民の交流拠点「茅野市民館」
長野県茅野市にある「茅野市民館」は、文化活動や集会、演劇などが幅広く開催され、“市民の居場所”として親しまれています。2007年には日本建築学会賞作品賞を始め、複数の建築賞を受賞。隣接する公園と建物を一体化させる設計や、誰もが迷わず入りやすいゆるやかな空間構成は「公共建築のあるべき姿」とも言われます。
利用者同士のつながりや地域の文化伝承が、建物を軸として強まっていく──一つの建物がここまで大きなコミュニティの核になるのだと、実例を見るとわかります。
子どもたちの学び舎づくりへ「高崎市立桜山小学校」「実践学園中学・高等学校 自由学習館」
学校建築も古谷さんの得意分野です。「高崎市立桜山小学校」や「実践学園中学・高等学校 自由学習館」など、学びの主体である子どもたちの視点に立ち、机や窓、廊下の配置に細かな工夫がこらされています。
例えば「実践学園 自由学習館」は、その画期的な空間づくりが評価されて日本建築大賞も受賞。いずれの校舎も、勉強だけでなく友達との交流、先生との語り合いといった“日常の何気ない景色”を大切にした設計が特徴です。
私はこのような“子どもたちが生き生きと過ごせる学校”が全国に増えていくと、教育の現場がもっと優しく、のびやかになるのではと感じました。
「建築は人と地域をつなげる舞台」──一貫した設計思想
古谷さんの仕事ぶりからは、何より「建築は人の営みや地域の文化と深く結びつく場」という強い信念が伝わってきます。自らが語る「LIVING WITH SURROUNDINGS(環境とともに生きる)」という理念のもと、それぞれの町の歴史、気候、住む人々の暮らしに寄り添った建築を目指しています。
福祉施設のプロジェクトでは「ただ開かれた空間だけではなく、利用者一人ひとりの安心やプライバシーも配慮する」大切さを説きます。
”開く”と”閉じる”の絶妙なバランス──それをどう見つけ出すかは、住民や施設スタッフとの丁寧な対話から始まる、という姿勢です。
私は、建築の仕事が「設計者の個性」を押し出すだけじゃなく“誰のために、どんな心地よさや交流をつくれるか”という目線に徹していることに、深い共感を覚えました。
どんなジャンルの建築も、地域と一緒に価値を育てていく。校舎や図書館、市民館が「そこに集う人の人生」を支え続ける──こうした建築は、何十年経っても色褪せない素晴らしさがあると実感できます。
次世代を担う教育者として──学生・若手建築家への惜しみない支援
1990年代から早稲田大学で研究・教育活動を続けてきた古谷さん。大学院まで含めておよそ520名もの修了生を指導、博士号を取得した教え子も30名以上にのぼります。
指導方針は「建築だけ学ぶのではなく、自ら考え、自分らしい進路を切り拓く力」を大事にしています。
伝統ある吉阪隆正の言葉「建築の仕事は君たちの卒業時にはひび割れの直ししか残っていないかもしれない」に影響を受け、平均点や他人の評価に満足せず「自分のやりたいことを探し抜く力」を伸ばすよう心がけているそうです。
私が素敵だと感じたのは、「大学は教員が教える場ではなく、学生が学び取る場」というメッセージ。教え子だけでなくリカレント教育や、韓国・中国の大学でも積極的に“次世代の育成”に尽力しています。
実際、古谷さんのもとからは有望な建築家や教育者が多数巣立ち、それぞれの場所で社会と建築のつながりを深めている様子が伝わってきます。
建築界のリーダーとして幅広い社会的役割
建築設計事務所NASCAの代表として多数の建築を手がけながら、日本建築学会会長や東京建築士会、日本建築士会連合会会長といった専門団体のリーダーも歴任。業界全体の発展、職域の倫理向上、若手へのエールなど、「現場のこと、社会のこと、どちらも見据えた調整役」として信頼されています。
また、福祉施設建築プロジェクトや公共建築の審査委員、地方自治体やリフォーム支援センターの理事など、多様な役職を務めています。時代ごとの社会課題や価値観ともじっくり向き合い、自らの経験や考え方を社会の幅広い場所で活かしている様子がうかがえます。
「自分は建物をつくっているのではなく、人の幸せの舞台をつくっている」
この意識が、地域や業界の内外から厚く支持されている理由だと私は感じました。
徹底した地域・人へのまなざし──素材選びからデザインまでのトータルな配慮
古谷誠章さんの作品に共通するのは、「素材そのものの温かさ・土地の記憶を活かす工夫」です。
例えば木材を積極的に利用すること、地域の気候や文化、地元産の素材などを採り入れ、誰でも自然に馴染める空間を生み出そう、という心意気をひしひしと感じます。
設計だけでなく「学内外のワークショップ」「地元の大工や職人さんとの協働」「地域住民との意見交換会」など、最初から最後まで“みんなで作る場づくり”の方法を大切にしています。
こうしたアプローチにより、建築が「特定の誰か」が主役になるのではなく、地域全体の風景や日常の一部として自然に溶け込んでいくよう配慮されているのです。
「建築は記憶を宿す装置」と表現するように、建物1つ1つが使う人や町の思い出・未来の“語り手”になる、その志がとても素敵だと思います。
世界からも評価──数々の受賞歴と幅広い分野での活躍
古谷誠章さんは、「狐ヶ城の家」(新建築賞・吉岡賞)、「詩とメルヘン絵本館」(日本建築家協会新人賞)、「香北町立やなせたかし記念館」「茅野市民館」「小布施町立図書館まちとしょテラソ」など、何年にも渡って多様な建築賞を受賞しています。
2010年代以降も「実践学園自由学習館」「熊本県山鹿市鹿北小学校」「阿久根市民交流センター 風テラスあくね」など、新しい建築の在り方を示す設計活動が続いています。
また、書籍執筆や展覧会、翻訳活動などを通じて、建築の“考え方”や“つくり方”を広い層に伝える発信も続けている点が印象的です。
こうした幅広い活躍は、国内外の建築専門家はもちろん、設計に携わらない一般の方々へもさまざまな気づきやヒントを投げかけています。
実際に感じたこと──“建てる”から“共に創る”への時代へ
古谷誠章さんを調べていて、何より心に残ったのは「建築は人と人、地域と時代を静かにつなぐ力がある」ということ。
わたしたちの毎日の景色に、人知れず寄り添う「居心地の良い場所」を―。図書館や市民館、学校やお医者さんまで、誰もが気づかぬうちにその恩恵を受けて暮らしています。
その背景には設計者だけでなく、自分が手がける仕事に対して真剣に向き合うプロの思いや継続的な努力があるのだと知り、学びと尊敬の念を強く持ちました。
もし身近な施設や町の“新しい建物”が完成した時、また誰かが“みんなで集まれる場所”について語るニュースを見た時。その裏には、きっと「人によりそう建築を目指して歩む専門家たち」の陰ながらの努力があることを、ぜひ知ってほしいと思います。
まとめ──古谷誠章さんの歩みが示す、現代日本建築の新たな方向
古谷誠章さんは、第一線で活躍し続ける建築家であり、優れた教育者であり、地域や社会と誠実に向き合ってきたリーダーです。
数多くの多様な建築作品と、情熱あふれる教育活動・社会貢献を通して、日本の建築業界から一般生活者まで、多くの人に価値と気づきを届けてくれています。
“建てて終わり”ではなく、“誰かの人生を支える舞台づくり”という発想が、今後ますます大切になる時代。その好例となる古谷さんの取り組みから、私自身も「身近な場所をじっくり見直す」「人と話して学び取る」姿勢を忘れずにいたいと思いました。
これからも建築と社会の接点を、斬新でなくとも丁寧に、じっくりつないでいく建築家──古谷誠章さんの今後のご活躍と、「人と地域を結ぶ建築」の輪がより広がっていくことに大きな期待を寄せています。
※この記事は「私の経営者名鑑」の編集部へ寄せられた紹介記事

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