※この記事は「私の経営者名鑑」の編集部へ寄せられた紹介記事
エネルギーからデジタルまで、現代社会を支える基幹産業の未来は、どのように描かれていくのでしょうか。伝統的な大企業が、時代の波にいかに応えて生まれ変わろうとしているのか――そこには、静かに、そして着実に、その変革を進めてきたキーパーソンがいます。
今回ご紹介するのは、東芝の代表取締役社長兼CEOとして、老舗メーカーの新時代に舵を取る島田太郎氏。東芝といえば、長い歴史のなかで経営危機にも直面してきました。「大きな変化のまっただ中で、現場からどう立て直すか」、その悩みや疑問に応えてくれるのが彼の経営姿勢なのです。本記事では、島田氏がこれまでどんな道を歩み、どのように東芝の組織改革を導いてきたかを詳しくご紹介します。
私自身、島田氏の発言や実際の改革の動きを目にして、「現場を大切にしながら、新たな価値の創出に挑む姿勢」に強い印象を受けました。企業変革や人材育成に関心がある方は、きっと多くのヒントを得られるはずです。
東芝イノベーションを静かに支える 島田太郎氏プロフィール
島田太郎氏は1966年10月22日生まれ、大阪府のご出身です。甲南大学理学部(理工学部)を卒業され、身長はなんと193cm。社長になった今でも、現場や人との対話を大切にされる方として知られています。
キャリアは1990年、新明和工業株式会社での航空機設計に始まりました。ものづくりの現場で、高度な技術や精密さを求められる仕事に誠実に取り組む姿勢が培われたそうです。
その後、アメリカの製造業向けIT企業での勤務を経て、巨大外資系企業シーメンスの日本法人社長、本社副社長、さらにドイツ本社でのマーケティングや営業戦略など、国内外のあらゆるビジネス現場で豊富な経験を積み重ねてきました。
2018年に東芝に転籍し、幹部としてデジタル事業の責任者に。2022年から代表取締役社長兼CEOとして、今や東芝グループの中心に立ち続けています。
多彩な経験で磨かれた・現場目線の経営哲学
島田氏の歩みを見て感じるのは、「ものづくり」「最先端技術」「グローバル事業」と幅広い現場を熟知している点です。例えば、新明和工業では航空機の細部設計に携わり、品質や安全への徹底したこだわりを学んだと言われます。
その後は、IT企業で製造現場とIT導入の橋渡し役を担当し、日本の現場で感じるコミュニケーションの難しさや現場の生きたデータの大切さを実感。それぞれ現場からの「納得感」を大切にし、人・部門・国籍を超えて粘り強くまとめ上げていった努力が、現在の経営手法にしっかりと生かされています。
また、2010年代にシーメンスの経営陣としてアメリカ・ドイツ本社でも要職を担い、自動化やAI化といった世界の潮流を身をもって体験しました。欧米企業の「変化を恐れない組織風土」と、日本の「現場主義」が東芝でどう融合できるか――その問いをずっと考え抜いてきたそうです。
このような背景から、単なるトップダウンではなく現場を主役に据えた「対話」「挑戦」の文化づくりが島田氏の特徴です。
崩れかけた財務基盤から復活を目指して
東芝といえば、かつて日本最大級の家電・電機メーカーの一つでした。ですが、2015年に発覚した粉飾決算問題や、アメリカ子会社の損失により、大きな会社としては珍しいほどの深刻な経営危機を経験します。
その後、外部の株主や投資ファンドが経営に関与し、経営方針も頻繁に揺らぐなど、グループ全体が難局にありました。人員削減や分社化、会社の上場廃止なども話題になり、多くの人が「老舗企業の行方はどうなるのか」と注目したことを思い出します。
こうした大きな渦のなかで社長に就任した島田氏は、まず「現場に目線を戻すこと」「共通の目標を持つこと」に注力したと言います。どうしても縦割りになりがちな大企業の組織構造や、部門間のすれ違いを少しずつほぐしていく取り組みを進めました。営業赤字から黒字転換まで、社内外の協力を束ねる姿勢が評価された経緯があります。
従来の壁を超える、部門横断プロジェクト
島田氏が掲げるキーワードのひとつが「分断を取り払う」ことです。特に、エネルギー・電子部品・社会インフラ・ソフトウェアなど、東芝内の多様な分社・子会社を横断して、共通の目標やシナジーを作り出す努力が特徴的です。
たとえば、かつて独自規格だった画像認識用半導体を、思いきって他社製のコアに切り替えてコスト・性能両面を向上させたり、インフラ用のOSもマイクロソフト製からLinuxベースに変更して長期運用を目指したことが、技術採用方針の「しがらみを取っ払う改革」として社内外で注目されました。
また、分社化の弊害として失われがちだった部門間の連携を蘇らせるため、2026年に向けて主要子会社の再統合を進めています。昔ながらの硬直した組織体制から、一歩一歩連携と効率化を推し進めていく姿勢が伝わってきます。
東芝の新たな成長戦略「変化を前向きに捉える」文化づくり
島田氏が特に強調するのが「変化を恐れず挑戦する人材」の活躍です。実際、インタビューなどでも、「東芝の社員は例外的に柔軟性が高い」「ゼロからやり直すことにも前向き」と語っておられます。
とくに社員の間には「大企業の壁を突破したい」「ベテランも若手も意見を出し合いたい」という気風があり、これが島田流の経営改革の基盤になっているようです。
また、チャットや会議を通じて経営層と現場社員が頻繁にコミュニケーションを取る仕掛けも増えています。現場発の企画や若手による自主プロジェクトなど、新たな動きが出やすい環境を整備。「やってみてダメならやり直せばよい」という柔軟なマインドが、業務改革に生きているのだと実感します。
AIやデジタル分野でも着実に前進
島田氏が経営戦略の柱に据えているのがAI(人工知能)の企業実装と、データ活用による事業の成長です。東芝は長年にわたり制御技術や家電の開発で蓄積してきたノウハウに加え、数々のAI特許も所有しています。
たとえば、日曜記者会見や業界イベントでは「AIは簡易な業務だけでなく、現場の知恵まで学習させることが大事」と語っており、現場担当者が自らデータを扱い、使いやすいAIツールを育てていく姿勢が目立ちます。
実際に、スマートレシートによるおすすめ情報の自動提案や、社内の購買履歴データを使ったカスタマイズAIサービスの導入など、身近な変化を起こす工夫も進めていることが話題です。
生成AIやAIエージェントの活用においても、社内全体で実際のビジネス課題とひも付けることを重視していて、単なる目新しさだけに頼らない本質的な取り組みが印象に残ります。
2025年には業界向けの展示会や講演などにも登壇予定で、その経験から得た知見を外部へも開示し、日本全体の産業発展に寄与しています。
数字で見る「東芝再興計画」 現実に現れる成果
島田氏のリーダーシップのもとで、2024年の営業損益は2018年比で約5倍、1,985億円を達成しています。「EV関連事業は予想ほど伸びていない」としつつも、エネルギー・インフラ・電子部品・IT分野で堅実な成果が積み上がり、着実に収益基盤が強化されてきたのは確かなようです。
加えて、グループ全体の約3.5兆円の売上や95,000人という従業員数からも、その規模の大きさと責任の重さが伝わってきます。
社内外の課題・主導権争いも乗り越えるために
2023年の上場廃止や投資ファンドの資本参加、経営体制の変遷など、東芝の社内外には一筋縄ではいかない課題も残されています。副社長との主導権争いや、さまざまな意見が対立する場面も新聞等では注目されてきました。
それでも島田氏は、以前から「社内対話を絶やさない」「多くの声を拾い上げる」ことを心がけている様子がうかがえます。リーダーとして安定化を目指しながらも、現場の成長を見守る姿勢が伝わってきます。
このような大規模企業で一つひとつの選択肢に正解はなく、慎重にバランスを取る姿が個人的にはとても印象的です。短期の変化よりも、社員と会社の未来をともに築くという、長期的な目標意識の大切さを感じとれます。
私の感想:変化を恐れず歩んだ者にしか出せない「しなやかな強さ」
島田太郎氏を取材・リサーチする中で、最も強く感じたのは「しなやかな現場主義」とも言える経営観です。
外資での経験を活かしつつも、自分のやり方を無理に押し付けるのではなく、社員一人ひとりの声や現場の課題をじっくり聞き取り、「みんなで納得して次の一歩を踏み出す」ことの大切さを体現されている印象があります。
加えて、AIやIT分野でも現場の実感と技術の橋渡し役を担い、専門家だけでなく中堅社員や若手に至るまで、それぞれの持ち味がいきる仕組みをつくっている点もとても参考になりました。
私自身、島田氏の「変化を恐れず、現場を大事にしつつ進化していく」姿勢は、現代の大企業やチームにこそ必要だと感じます。厳しい状況下でも粘り強く支えるリーダーシップが、東芝という老舗企業の根っこにしっかり根付いているのだと思います。
おわりに:島田太郎氏が描く東芝・そして日本企業のこれから
東芝のこれからがどう歩んでいくのか、一企業の枠を超えて多くの人の関心が高まっています。
島田氏は、伝統ある会社ならではの強みと、新しい分野への柔軟な試みをつなぐ役割を、静かに、しかし確実に果たしているように思います。特定の分野に閉じない幅広い現場経験、現場と経営をつなぐコミュニケーション、そして社員の挑戦を支援する姿勢――こうした点に共感を覚える方も多いのではないでしょうか。
私は、これからも島田太郎氏が率いる東芝の動きに注目し続けたいと思います。大きな変化が続く社会のなかで、古い組織がもう一度前を向いて歩む姿は、必ずや多くの企業、社会人にも前向きな刺激を与えてくれることでしょう。
※この記事は「私の経営者名鑑」の編集部へ寄せられた紹介記事

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